夜の川の話

夜に橋を渡りながら川を見たら怖くなった。なにしろ、暗闇の中の大量の水は怖い。夜であるがゆえ、おそらく昼間なら気にならないであろう、打ちつける水の音も聞こえ、それがまた、思ったより怖い。落ちれば、水中からはもう何も見えないだろうと想像して怖いし、その一方で、ふと飛び込んでみたくなるような衝動が不意に起こってきて、怖い。果たして、飛び込んでみたいという衝動を無理にも抑え、このまま飛び込まずにいられるのかどうか、という賭けが怖いのである。

橋から、更に川に近い遊歩道部分への階段を降り、柵越しに、夜の真っ黒な川を覗いてみる。打ちつける水音がよく聞こえる。この音に紛れて、まるで何事もないかのように落ちてしまえばいいのではないかという気がしたり、ふと、風呂にためた湯の音を思い返したりする。